企業と求職者の情報量を“even”に。HRRT代表の五味渕氏が考える日本企業の採用課題

会社経営における採用の重要性は言うまでもない。

しかし1実際の現場では「職務経歴書にはこの仕事ができると書いてあるのに……」、「面接の時とは全然態度が違う……」など採用担当には手に負えない問題があり、結果として採用のミスマッチが起きることもある。

そんな問題を解決するサービスを提供しているのが、株式会社HRRTだ。同社ではリファレンスチェックサービスにより採用の判断材料となる情報を第三者の立場で収集し、企業に提示している。

今回は同社代表の五味渕氏にインタビューを行い、理想とする「採用の形」や、そのために必要な「考え方」について話を聞いてみた。

採用におけるリスク回避、相互理解を支援

――まずは既存の「リファレンスチェックサービス」がどのようなサービスか伺えますか。

五味渕氏:簡単にいうと求職者の推薦状を作るサービスです。リファレンスチェックを希望する企業から依頼を受け、求職者に紹介してもらった推薦者にインタビューを行います。そしてヒアリングした内容を資料にまとめて企業側にお渡しする、というサービスです。

――今、リファレンスチェックを希望する企業は多いのでしょうか。

五味渕氏:そうですね、最近は日本の企業でも労働者と経営者との間で揉め事が起こることも多々あるので、採用する側としては慎重になっているのかもしれません。そういったことが起きないように、リスク回避や相互理解のツールのひとつとしてご利用頂いています。

新しくリリースしたSNSチェックサービス「MiKiWaMe」も、そういった企業の採用における課題をもっと手軽に解決できるサービスを作りたい、と思って開発したんです。

――「MiKiWaMe」は、SNSを中心としたWeb上での情報収集に特化したサービスですね。個人的には、SNSサーチは採用担当者でもある程度できることかと思ったのですが……。

五味渕氏:もちろん、ある程度のことであれば調べることはできると思います。ただ、15分〜30分ほどの検索で調べられた情報だけで、採用におけるリスク回避や相互理解ができるのかどうか。

弊社は、風評対策に強みを持つ弁護士のチームとタッグを組んでおり、より深く粒度の細かい情報まで集めることができるんです。

――ただ業務をアウトソースしているわけではなく、採用担当者にはできないことまでカバーしてくれるということですね。

採用に判断基準を

――五味渕さんが採用領域の課題解決に取り組もうと考えたのはどうしてでしょうか。

五味渕氏:私は前職で管理部の役員をしており、採用においても決済権を持っていました。そのときにずっと感じていたのが、「採用の判断基準が不明確だ」ということです。

日本の採用は自己申告でポテンシャル採用。経営側が判断するための情報は、履歴書と職務経歴書と「面接で話した印象」だけなんです。コミュニケーション能力が高そう、理解力がありそう……。これでは入社後に「思っていた人材と違った」となるのが目に見えています。

もっと候補者のことを知らなければ、ミスマッチのない採用や組織マネジメントができないと思ったんです。と同時に、そういったサービスが日本で普及していないことに気付き、自分たちで作ろうと考えました。

――なるほど。元々は五味渕さんも採用に頭を悩ませる担当者の一人だったということですね。「もっと候補者のことを知らなければ」というのは具体的にはどういうことでしょうか。

五味渕氏:私は前職で採用に関わっているとき、「採用において企業側が持つ情報と求職者側が持つ情報がイーブンじゃないな」とずっと思っていました。

求職者が企業のことを調べようと思えば、HPを見たりIR情報をチェックしたり、そのほか口コミサイトやSNSなどでも情報を収集することができます。しかし、企業側が個人を調べる手段は限りなく少なく、履歴書と印象だけで判断せざるを得ません。

その上で、採用する側にとって一番知りたいのは「面接で本当のことを言っているか」ということ。どれだけすごい実績があっても、それが嘘や誇張であれば意味がありません。その真偽や資質を知ることができれば、採用の判断がしやすくなるだろうと思ったんです。

――だからこそ、御社ではその「本当かどうか」を確かめるサービスを提供しているんですね。

「推薦状」のあるべき姿

――最後に、会社としての今後の展望について伺えますか。

五味渕氏:現段階では入社前の対策サービスを提供していますが、今後は入社後も定点的に見守るようなサービスを作りたいと思っています。やはり入社前の情報ですべてを理解することはできないですから、入社後までサポートできるといいなと。

あとは、早く既存のサービスを日本の採用に浸透させたいですね。SNSチェックやリファレンスチェックの文化がスタンダードになれば、もっと採用も活性化すると思います。

ちなみに、アメリカでは推薦状がないと選考を受けることすらできない企業も少なくありません。実際、日本にある外資系の企業ではリファレンスチェックにかなり積極的な傾向があります。

日本では、良くも悪くも性善説で採用を行うので、場合によってはミスマッチによるトラブルが発生してしまうんです。この「考え方」を変えていければいいなと思っています。

――入社前にしっかりとチェックするという文化を定着させたい、と。

五味渕氏:はい、実は弊社のサービスでもほとんどの場合が、候補者にとってのプラスの推薦になるんです。つまり、面接で本当のことを話している人からすると、第三者からの後押しがもらえるサービスなんです。

――確かに、後ろめたいことがなければ、前職の同僚からも自分の評価を話してもらいたいですね。

五味渕氏:今はBtoBのサービスですが、将来的にそういった文化が出来上がれば、求職者から依頼を受けて第三者視点で推薦状を作成する業態になれればいいなと思っています。「推薦状」とは本来そうであるべきだと思うんです。